恋歌 〜secret love〜
「もし何か困ったことがあったら何でも相談しに来いよ。押端は質問もしに来ないし、いつも心配してるんだからな」
「すみませんっ……」
あたしは、慌てて頭を下げた。
「いや、そんな風に謝ることじゃないだろ。1人で解決できるならそれで良いんだ。
ただ、困った時に助けてくれる人間がいることは、しっかりと覚えておいてくれよ」
「……はい。ありがとうございます」
さっきとは違って、ゆっくりと深く頭を下げる。
顔を上げると、森田先生が笑っていて……
あたしも、笑顔を返した。
……少しぎこちなかったけどね。
「他に何か話したいことはあるか?」
「いえ、特に……」
「じゃあ、次の……桐渓を呼んできてくれるか? 今日はこれから、ちゃんと勉強するんだぞ?」
「はい。ありがとうございます。……失礼します」
立ち上がって、もう一度頭を下げる。
早足で外に出て、あたしは深く、息を吐いた。