恋歌 〜secret love〜
『見てきた』
先生にとって、この言葉に深い意味はないんだと思う。
生徒の1人として、先生として、当たり前のことをしただけなんだと思う。
それでも
頼城先生と直接関わることができたわけじゃない部活で……
副担任としてお世話になって、質問にも答えてもらった勉強で……
先生達の誰よりも一番近くで支えてくれたPEACEで……
こんなにもたくさんの機会で見ていてもらえたなら
気にしてもらえていたなら
あたしは胸を張っても良いんじゃないかな?
目標達成、だよね?
「あ、そろそろ会議だな……」
教室の時計にちらっ、と目を向けた先生が、そう呟いた。
「会議、ですか。大変ですね」
「まぁな。もう外も暗いし、奏は急いで、気を付けて帰れよ」
「はい」
さっきの笑顔とは打って変わって、真面目そうに先生が言った。
「じゃあ、またな。勉強、頑張れよ。……応援してる」
そう言いながら足を進めた先生が、すれ違う時にぽんっ、とあたしの頭に手を置いた。