恋歌 〜secret love〜
◇nine point five melody
┣見え始めた不安
「微妙……すぎよねぇ…………」
あたしは、もう何回目かわからない溜め息を吐いた。
まわりのみんなが2次試験に向かって突き進む中、あたしだけが置いてきぼりになってる……
そんな感じ。
目の前に開かれた参考書とノートは、何回も開いたせいで少しくたっとしてる。
赤に青にオレンジに緑……。
やり直す度に書き込みが増えていったページ達も、今は何だか滑稽に見える。
そして、そんな自分が悲しい。
「だぁー!もうっっ! しっかりしなさい、桐渓彩乃!
いつまでもぐだぐだ引き摺ってるなんて、あたしらしくもない!」
両頬を軽く叩いて、気合いを入れる。
ぱんっ、という乾いた音が、静かな部屋に鳴り響いた。