恋歌 〜secret love〜
先生の前に、仕舞いかけてた問題集を差し出す。
「おぉ……頑張ったな」
にっこりと微笑みながらそう言う先生をまっすぐ見ることができなくて……
あたしはとっさに視線を下に落とした。
「奏はもともと文章を書くのが得意そうな雰囲気だったから、そこまで心配はしてなかったんだけどな。
俺が小論を見てた生徒の中で、文章力は1番だったよ」
ぱらぱらとページを進める手が、大きくて、しなやかで
でもちゃんとごつごつしてて……
頼城先生の言葉を正面から受け止めるのが恥ずかしいあたしは
何故か先生の手ばかりを見つめていた。
「自分の思ったことを、順序立てて、問題文に合うように、最後までしっかり書ききるんだ。
そうすれば、奏は絶対に大丈夫。
具体例になりそうなネタも、今までにいろんな話をしてきた中でたくさん蓄えられたはずだろ?」
そんなあたしの様子を知ってか知らずか
先生は、そのまま話を続けた。