恋歌 〜secret love〜
机の上で震えたケータイと鍵を持って、俺は職員室を出た。
手短にケータイを操作して、そのまま上着のポケットに滑らせる。
今の時間は授業で使われてない音楽室。
教室とは離れた棟にあって、音楽の先生も授業以外は使わない。
そのせいか、いつも鍵はかかってるし、静かな部屋でもある。
階段をのぼりきって視線を上げると、そこにはドアにもたれた奏がいた。
俺に気づいて動いた奏の、チェックのスカートが揺れる。
「ありがとうございます、先生」
「大丈夫だ。とりあえず、開けるから」
そう言って、中に入るように奏を促す。
「ありがとうございます」
小さく響いた高めの声が、俺の気持ちを少し弾ませた気がした。
「2回目だな、こうやって呼び出されるのは」
「ここの方が落ち着いて良いなぁって。受験結果の話なんて、他の人がいると少し言いにくいですし……」
前に呼び出されたのは、前期の試験が終わった後だった。
どんな問題が出て、どんな解き方をしたのか。
回答が気になった俺は、奏に答案の復元も頼んだ。
あの時の少しほっとした様子からは、結果も期待して良いと感じたけど……
「それで、発表はどうだった?」