恋歌 〜secret love〜
◇twelve point five melody
┗イトシイウタ。
「高校の文化祭で作った歌なんです。
当時は、友人とバンドを組んでいたので……こうやって1人でステージに立つとどきどきします」
そう言うと、奏は司会者に向かって小さく微笑んだ。
白を基調にしたステージのセットは、高校の体育館とは比べ物にならないくらいに明るい。
客席として準備されたイスの群れなんて、きっとよくは見えないんだろうな……。
俺が来てることにだって、そのまま気付かないでいれば良い。
「では、歌っていただきましょうか。お願いします」
ステージの中心から離れる司会者に小さく頭を下げて、奏は正面を向いた。
両手で握りしめられたマイクからは、唄声だけじゃなくて緊張まで伝わってきそうで
俺までどきっとする。
……でも、アイツはこういう場面に強いんだったよな。
俺の心臓の方がもたない気がする――――
流れ始めたメロディーは、やっぱり体育館で聴いたものとは少し違った。
響き方も、ステージに立つ奏の雰囲気も、全く違う。
高校を卒業してまだ少ししか経ってないのに、あんなに大人っぽくなるもんか?
それが少し寂しくもあるし……
嬉しくもある。
……勝手にオーディションに応募したって言ったら、怒られるか?
今更ながらそんな不安が頭をよぎって、思わず両腕を組んだ。
指先に当たったジーンズのざらっとした感覚に、少し眉を寄せた時
少し力強さの増した奏の声が聞こえて、俺は思わず顔を上げた――――