恋歌 〜secret love〜
頬に残った少しぱりっとした感覚に寂しさを感じながら、あたしはマイクに向き直った。
「何だか、この歌を作った時のことを思い出して、泣いちゃいました」
「思い入れの強い歌なんですね。どんな気持ちで作ったんですか?」
小さく笑ったあたしに、質問が返って来た。
「そうですね……力強い、前向きなラブソングを目指しました」
「と、言うと?」
「あの頃、あたしはいろいろなことを我慢して、何もしないうちから諦めてばかりいました。
でも、それってすごく寂しいし、もったいないことだと、友人が気付かせてくれて……。
あたし程後ろ向きな人は、他にいないかもしれませんけど。恋愛に関してなら、他のたくさんの人にも当てはまることなんじゃないかと思ったんです」
にっこりと笑って、客席を見る。
「片想いのまま気持ちを秘めておく……。そんな経験を持っている人は、この中にもいらっしゃるんじゃありませんか?」
軽く首を傾げると、観客から少しざわざわとした音が聞こえた。
やっぱり、みんなもそういう経験があるのかな……?
「でも、そういった気持ちを、何もアクションを起こさないまま心の中に仕舞い込んじゃうのは少し寂しいじゃないですか。後悔するかもしれない。
だからそんな時に、強くあってほしいって、自分が後悔しないように、相手を思いやりながら頑張る道を探してほしいって……。
そんな気持ちを伝えられたら、と思って、この歌を作りました」
「なるほど」
「まぁ、自分に気合を入れるためでもあったんですけどね」
「じゃあ、当時好きな人がいたんですか?」