恋歌 〜secret love〜
「それは……秘密です。
でも、この歌はとても大切に作ったし、歌いました」
あたしは、そう言ってまっすぐ前を見つめた。
そうしてから、涙がすっかり乾いていて、自分が笑ってることに気付く。
「ありがとうございました。では、お戻り下さい」
「はい。ありがとうございました!」
大きくゆっくりと頭を下げて、あたしは初めにいた場所に戻った。
同じタイミングで、次の人がさっきあたしのいた場所に向かって歩き出す。
戻る瞬間
後ろを向こうとした瞬間に、少しだけ、観客席の右端を見た。
話している間は怖くて、見る勇気がなかった場所。
でも
一瞬だけではさっき気になった場所なんて見つけられなくて……
あたしは小さく、溜息を吐いた。
「どう? 推薦者らしき人、いた?」
「さすがにここからはわからなかったよ」
「そっかぁ……。やっぱり、休憩時間がチャンスだね」
隣に戻ったあたしに、さゆみちゃんが小さく言った。
ステージの上にいるからかもしれないけど、その笑顔がさっきよりも眩しい。
休憩時間か……。
本当に見つかるのかな?
そうは思うけど、やっぱり全力で探してみたい。
だって
“後悔しないように頑張れ”
って、今自分で言ったばっかりなんだもん!
大きく息を吐いてから、あたしは、ライトでいっぱいのステージでまっすぐ顔を上げた。