恋歌 〜secret love〜
そのままぼーっとしていたら、後ろからさゆみちゃんが顔を出した。
長い髪が、あたしの腕にさっと当たる。
「さっき読まれた、推薦者の人からの手紙だって。あたしが持ってて良いって」
「そうなんだぁ。あ!筆跡で誰かわかったりしない?」
「そんな、エスパーじゃないんだから……」
きらきらした目で言うさゆみちゃんに苦笑いを返して、あたしは貰った手紙を封筒から出した。
シンプルな白い封筒に入っていたのは、グレーで薄く罫線が引いてあるだけの、シンプルな便箋。
そこに規則正しく並んだ黒い文字は、誰のものかよくわからない。
……先生の文字って、黒板でしかまともに見たことないし。
でも、黒板に字を書くと妙に下手になったり、ゆがんだりするし……。
「変なの……」
開いた便箋を眺めながら悶々とするあたしの隣で、さゆみちゃんが小さく呟いた。
「え?」
「だって、最後に自分の名前もないし、“奏ちゃんへ”みたいなことばもないし」
「確かに……」
「それに、改行もすごく不思議じゃない?
こことか、まだ書けるのにわざわざ行変えちゃって……。作文だったら怒られちゃうよ。
言葉もなんか妙に難しい選択されてるとこあるしさ」
言われてみれば、そうかもしれない……。
あれ? “言葉”の“選択”?
あたし、そーゆーのどこかで……――――
「もしかしてっ……」