恋歌 〜secret love〜
ざわざわ人が騒ぐ声は、直接あたしの耳に入ってくるもの?
それとも、電話越しに聞こえるもの?
そんなことだって、よくわからない。
……でも、その両方な気がする――――
『今は……窓の近くにいるよ』
“バレたか?”
なんて小さな声が、戸惑うみたいに耳に入って来た。
「窓、ですか」
この近くにある窓って言ったら、目の前に広がるアレしかない。
あたしは人をかきわけながら窓の方へ進んだ。
『そっちはだいぶ騒がしいところにいるんだな。声が結構聞き取りにくい』
何とか窓のところまで行って、あたしは左右を見回した。
「その言葉、そのままお返ししますよ」
絨毯と同じ色の低めの手すりが窓の前には付けられていて
そこにもたれながらジュースを飲んだり、あたしと同じようにケータイを耳に当てる人がたくさんいる。
『そうか……』
ジュースを買ってる雰囲気はないから、やっぱり逆側から探すべきかな?
そう思って、自動販売機に背を向けて早足で歩いた。
「窓の外、何が見えますか?」