恋歌 〜secret love〜
『右?』
少し首を傾げながらそう言うと、懐かしい影が視線を移した。
その動きが、まるでスローモーションみたいに、しっかりとあたしの頭に刻み込まれる。
「奏……」
見開かれた二重の瞼はやっぱり綺麗。
あたしはできる限りの力で微笑んで、ケータイを耳元から離した。
「推薦者って、頼城先生だったんですね?」
貰った手紙を差し出しながら言ったあたしを見て、先生は小さく笑った。
「バレたか。やっぱり」
「初めは全然わかりませんでした。でも、客席で先生らしき人をちらっと見て、もしかしてって思って……。
さっきこの手紙を貰って、確信しました。……嘘じゃない、ですよね?」
手すりを離れてあたしの正面に立った先生を見上げる。
先生は、少し前まで毎日見ていた笑顔をゆっくりと落とした。
「嘘じゃない。……嘘だったら、ここには来ない。でも、よく気付いたな……」
「だって、あたしも同じことやりましたから。先生も、それに気付いたってことですよね?」
「まぁ、そういうことになるな」