恋歌 〜secret love〜
「確かに。あたしはそーゆータイプじゃないですよ。てか、メイド服着たくないから、裏で調理をしたかったんですけど……。
何か、こう、ぼーっとしてて気付いたら接客になってた……みたいな?」
言ってる途中で恥ずかしくなって、鞄をぎゅっと抱き締めて俯いた。
「奏らしい理由かもな」
あたしを見て軽く笑った頼城先生が、アクセルを踏む。
一昨日もずっとそうだった。
頼城先生の何気ない会話や行動に、あたしの心臓はいちいち反応して、煩くなる。
コンクールでステージに立っても、クラス代表としてスピーチをしても
どっちかというと緊張なんてしなかったあたし。
それなのに、右側に頼城先生のいるこの状況では、いつまで経っても心臓が鳴り止まない。
あたしは、先生に見えないように小さくため息を吐いた。
この、幸せなのか、そうじゃないのかよくわからない状態も、もうすぐ終わる。
そう考えたら、ほっとしたけど……
何だかもやもやした感情も、一緒に生まれてきた。