恋歌 〜secret love〜
 


「確かに。あたしはそーゆータイプじゃないですよ。てか、メイド服着たくないから、裏で調理をしたかったんですけど……。

何か、こう、ぼーっとしてて気付いたら接客になってた……みたいな?」



言ってる途中で恥ずかしくなって、鞄をぎゅっと抱き締めて俯いた。



「奏らしい理由かもな」



あたしを見て軽く笑った頼城先生が、アクセルを踏む。




一昨日もずっとそうだった。



頼城先生の何気ない会話や行動に、あたしの心臓はいちいち反応して、煩くなる。



コンクールでステージに立っても、クラス代表としてスピーチをしても

どっちかというと緊張なんてしなかったあたし。



それなのに、右側に頼城先生のいるこの状況では、いつまで経っても心臓が鳴り止まない。




あたしは、先生に見えないように小さくため息を吐いた。



この、幸せなのか、そうじゃないのかよくわからない状態も、もうすぐ終わる。




そう考えたら、ほっとしたけど……

何だかもやもやした感情も、一緒に生まれてきた。



 

 



< 95 / 339 >

この作品をシェア

pagetop