初恋の行方〜謎の転校生〜
「お父さん!」

すると、今度は母が父を怒鳴った。

普段はまず怒鳴ったりはしない母だけに、それには父も驚いたみたいだ。


「な、何だよ?」

「そんな事ぐらいで、大きな声出さないでください」

「そんな事って、き、キスしてたんだぞ? 嫁入り前の娘が」

「何が“嫁入り前”よ。年寄り臭い」

「お母さん……?」

「美咲だって年頃の娘なんだから、キスのひとつやふたつ、しても当然でしょ?」


すっかり両親の対立になり、私はボーッとそれを眺めていた。


「年頃? 美咲はまだ高校生の子供じゃないか」

「へえー。じゃあ聞きますけど、あなたが初めて私にキスしたのはいつだったかしら? 忘れたなんて言わせないわよ?」

「忘れるわけないだろ? あれは俺とおまえが高2の時さ。付き合いだして10日目の、学校の帰り。場所は……」

「そこまで! ほら見なさい。美咲は高3なのよ? 遅いぐらいだわ」

「しかしだなあ、俺達には愛があった」


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