初恋の行方〜謎の転校生〜
あっ。


その時、私は漸く気が付いた。柏木君が私に“付き合って”と言ったのは、悠人君の真似をしただけ、という事に。

柏木君が自分の事を、“僕”なんて言うわけないもの。


つまりあれは、からかわれただけ、って事なんだ。

それと、本庄さんという存在……


たぶん柏木君は、私の事なんて何とも思ってない。


でも、だったらどうして、キスなんかしたんだろう……



「……美咲?」

「え? あ、わからない」

「何がわからないの?」

「何もかも、わからない」


涙が出そうになり、私は立ち上がってリビングを飛び出した。

「美咲!?」と母が叫んでいたけど、それに構わず私は階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込むとドアに鍵を掛けた。


ベッドに倒れ込み、枕を抱きしめると、涙が次々と溢れては零れていった。


< 169 / 224 >

この作品をシェア

pagetop