初恋の行方〜謎の転校生〜
無人の公園は静かで、微かに通りを走る車の音が聞こえるだけだった。


川島美咲は無言で銀杏の樹を見上げていた。何かを思い出しているかのように。


俺は悪戯心から、彼女の顔の前に自分の顔を突き出してみた。


すると彼女は驚いて下を向いたので、俺はすかさず彼女の顎に指を掛け、クイッと顔を上に向けさせた。


怒るかなと思ったが、彼女はおとなしく上を向き、「柏木君……?」と言って、潤みがちな瞳で俺を見つめてきた。


誘ってんのか?


だとしたら、ずいぶん軽い女だな。いくら俺の顔に見覚えがあるからって、今日会ったばかりの男に、こんな隙を見せんのかよ……


川島美咲の気持ちを確かめるべく、俺は彼女を見ながらゆっくりと顔を近付けて行った。


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