初恋の行方〜謎の転校生〜
「文句言ってやる」


そう言って理恵が柏木君の方へ行こうとするのを、制服の裾を掴んで私は止めた。


「ちょっと、なんで止めんのよ?」


「恥ずかしいし、私……怒ってないから」


「怒ってないの? なんで?」


「今は時間ないし、どう言っていいか分からないから、後で話すね」


「あ、そう……」


理恵は釈然としない顔をしていた。
それはそうだと思う。だって私自身、自分の気持ちがよく分かってないのだから……



理恵とは、お昼休みにじっくりその話をした。


理恵は、私は淫らじゃないと言ってくれた。男の子を好きになったら、そういう気持ちになるものなんだって。


そして理恵は、柏木君が悠人君にそっくりだという事を、彼に話すべきだと言った。


だから、会ったその日の内に好きになったんだと。それで彼の私への誤解が解ける、と理恵は言うんだけど……


それを言うと、余計に軽蔑される気がする。

いずれにしても、柏木君が何を考えているかが謎だ。
恋愛経験が豊富な理恵でも、それが分からないのだと言った。


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