初恋の行方〜謎の転校生〜
「いえ、そっちはいいから、こっちを……」


と言いながら、柏木君は私の服を拾い上げた。


「制服は泥で汚れて、ブラウスの方はボタンが取れて……、ああ、ここは破けてるなあ。応急処置でいいんで、何とかしてもらえませんか?」


「分かりました。やってみますので、少々お時間をください」


律子さんは私の服を抱えると、チラッと私に視線を送ってから部屋を出て行った。



「さてと……」


柏木君は、テーブルの上から湿布薬とハサミを持つと、私の側に来てベッドに腰を降ろした。


私は、布団から目だけを出して、柏木君の仕種をジッと見ていた。


柏木君は、ワイシャツの袖を捲りながら、私の目を見て、

「布団から出ろ」

と言った。


< 81 / 224 >

この作品をシェア

pagetop