One STEP




…あたしが好きな先輩って、どんな?



よくよく考えてみると、いつもあたしばっかりの一方的なアタックで、あたしは彼のことをイマイチよく分からなかったことに今更ながら気づいた。


カッコいい!


そう思ったら止まらなくて、ここまで先輩を思い続けてきたけれど、実際問題、あたしは―――――…






「君、いい声してるね」






考え事をしていた途中に声がかかったものだから、ビックゥっと飛び上がってしまった。


あたしの背筋は一気にピンと伸びる。



誰もいない、もはや存在を忘れられているこのオンボロ校舎。


ところどころ鉄筋なんかが丸見えになっているほどだ。



そんな場所で。


どこからか声。


低い、声。



う…うそ…もしか、して…?



怖ろしい考えが脳内を駆け巡り、嫌な汗が背中を伝う。


だらだらだらだら流れ出す。



それでも逃げる勇気なんてこれっぽっちもなくて、奥底にある小さな勇気を振り絞ってゆっくりと振り返ることが精一杯だった。





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