One STEP



観客が既に作り上げている空気にボーっと馴染んでいると、横からあたしの腕を突きながら琴子が眉を上げて言った。



「ほらほら香澄!ボーっとしてないの!始まるよっ?!」



あと1分!


なんて、携帯を確認しながら興奮して言う琴子。



人のことばかりじゃない。


琴子みたいに口に出すことはできないけれど、気づかないうちにあたしも同じくらい興奮していた。



それは観客が作り上げる空気のせいでもあるんだろう。



ざわざわと落ち着かない会場――――体育館。


心も同じくらいざわついている。




突如、バチンっと体育館の電気が消えた。




辺り一帯が暗闇に包まれると同時、パっとステージだけが明るく灯った。



スポットライトがステージの脇に集中した。


そこにいたのはマイクを片手に構えた台の上に立っている夏沙先輩がいた。



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