One STEP
夏沙先輩はあたしに話しかけてくれるいつものテンポで物語の紹介をし始めた。
「今回は、白雪姫に挑戦してみました!」
気持ちいいほど体育館に響き渡る声。
あたしは瞬きも忘れてしまうくらい先輩の声に聞き入っていた。
「多少アレンジを加えましたので、更にお楽しみいただけると思います!」
ニっと自信満々そうに口角を上げた夏沙先輩。
先輩の瞳はしっかりと前を見据えていた。
そこに不安や恐怖などといった、マイナスな感情の色は一切ない。
むしろ喜びや興奮などといった、プラスな感情の色が見え感じる。
やっぱりキラキラ輝いて見える。
あたしはどこか遠い存在の人でも見ているかのようにボーっ見つめていることしかできなかった。
一通り話し終えた先輩は最後の掛け声をかけた。
「それでは始めましょう!」
そういうと、観客側の空気がガラリと変わった。
そこに響き渡る夏沙先輩の声。
「イッツショータイムッ!!!」
同時にシャァ―――っと爽快な音と共に幕が開いた。