One STEP
本当の気持ち
「何か、ごめんね」
突然先輩が溢した言葉に、あたしは戸惑った。
「…え?」
あたしはゆっくりと視線を横に移す。
そこにはどこか悲しそうな目をした先輩が映った。
先輩…?
「美空、かなりいい奴なんだけど、たまーにキツくなっちゃうのな」
あぁ…あの先輩のことか…。
あたしは先輩の顔が見れなくて、足元にいた蟻を見ることにした。
「無理やり悪かった」
「え…?」
まさか先輩が謝ると思わなかった。
突然のことに、頭が回らない。
「もう、しつこくしないから」
そう言って、先輩は笑う。
あたしはその顔が見れなかった。
なんでそこで笑うの?
作り笑顔は先輩に似合わない。
あたしが…先輩にこんな顔をさせてしまっているんだ…。