One STEP
なんで、こんなことになっているんだろう。
握られている手が汗ばんできた。
「…荒木…香澄です」
「声が小さいっ!さっきのあの声はどこにいった!」
…ワケワカンネ。
ちょっとイラっとしてきた。
なんでこんなことをこの人に言われなくちゃいけないんだ。
なんなのなんなのなんなの…?
あたしはあからさまに、嫌な顔をしながら、
「荒木香澄ですっ」
ちょっと荒々しく言った。
これで引いてくれればいいんだけど。
あたしはどーせ嫌な女ですよーっだっ。
なんて心の中で毒つきながら舌を出してみたりした。
なのにこの先輩は引くどころか、余計に目をキラキラと輝かせた。
あたしは眉間にシワを寄せ、ジリっと一歩後ずさる。
な…なに?!
あたし、何かそんな興味を持たせるようなことした?!言った?!