One STEP
ガッシリと、掴んだ手を胸の前まで持ってこられた。
そしてこれでもかっというくらい目を輝かせてこの一言。
「名前通り澄んでいる声だ!!!」
…はぁ?
何そのクサイ台詞。
初めて聞いたし初めて言われた。
あたしはきっと、最高に情けない顔になっているだろう。
どうしてこんなに馴れ馴れしいんだろうかと思った。
本気で思った。
正直、殴り飛ばして一刻も早くここから逃げ出したいとも思った。
ちゃっかり、もう友達だぜ!みたいなオーラが気に食わない。
あたし、そんなことをこれっぽっちも思っていないんだけど。
近寄りたくない。
関わりたくない。
この人すごく変。
すごく怪しすぎる。
すごい面倒だから睨みつけている。
しかしなんのことかも分かっていないソイツは、ぼへーっとマヌケ顔であたしを見つめたまま。