One STEP
不思議そうに首を傾げるあたしに、八木先輩はコップを静かに机の上に置いて言う。
「こいつね、上の名前―――」
「言うなバカッ!!」
八木先輩の口を必死に塞ぐゆた先輩。
………?
「分かった分かった。言わないから」
ブーっと不機嫌になりながら唇を突き出す、ゆた先輩。
ゆた先輩に気づかれないように、八木先輩はコッソリあたしの耳元で、
「上の名前嫌いなんだって。だから下の名前で呼んであげて」
そう呟いた。
なるほど。
だから上の名前は言わないんだ。
面白いなぁと思った。
下だって、ゆただしね。
やはり変わっている人が多いみたい。
「分かりました」