One STEP
「夏沙ぁーお前のポケットに、この前の1リットルジュースはないわけー?」
椅子にもたれ掛かりながら柳沢先輩は言う。
八木先輩とゆた先輩も求めるような目で夏沙先輩を見ている。
あたしも同じように求めるように顔を上げ、先輩を見た。
何か冷たいものが欲しい。
とてつもなく欲しい。
「ないよーんだぁー、仮にあったとしても柳沢にはやらないしぃー」
ダラリとそう言って、べーっと舌を出す。
なんとも憎い顔。
だがまた、そんな顔も可愛く見えてしまうのが夏沙先輩マジックだ。
「…デブ夏沙」
ボソっと呟いた、その声を夏沙先輩は聞き逃さなかった。
「うるせーバカ柳沢」
だが口だけで噛み付きはしないようだ。
さすがに暑すぎて、そんな気力も沸かないんだろう。