One STEP
「なんだなんだぁーお金ないなら夏沙が払ってあげるのにのー」
ブーっといじけたように唇を突き出す夏沙先輩。
あたしはホンワリと胸が温かくなった。
今までに感じたことのない、感覚。
トクントクンと小さく揺れる心臓。
先輩たちは気を使ってるわけじゃと思う。
ただ純粋にあたしのことを想ってくれているんだ。
なんだなんだ…先輩って…こういう人たちなの…?
温かくなる感覚。
それは夏のせいじゃない。
あたしはその300円を、小さく握り締めた。
〝先輩が恋しいとかも言ってたっけな〟
お姉ちゃんが言った言葉が脳内に響く。
その気持ち…今のあたしなら少し分かるかもしれない。