One STEP
「あの…あの…あたしは…」
演劇部に入っておきながら今更なのだが、あたしは本当に人前に出るのが苦手。
さてどうしたものか。
すると、任せなさいとばかりに、寺原先輩が胸を張ってこう言った。
「だからそんな荒木さんのためにも。今年もやりますよ合宿♪」
が…合宿…?
頭の中は、ハテナだった。
「やったやったー!!!今年も行くんだね?!」
「かなり楽しみだ~♪」
夏沙先輩とゆた先輩は手を取り合って跳ね回る。
一見クールな八木先輩も、柳沢先輩と嬉しそうに話している。
一体なんなんだろう?
合宿って楽しいもの?
キツイものじゃないの?
もちろんあたしは〝合宿〟なんて知らない。
1人蚊帳の外。
呆然と先輩たちを見ているしかなかった。