One STEP
「あっれー?慎也先輩、無理やりっすかー?」
「あらら。そういうことしちゃダメって言ったよね、あたし」
「ぶふふーっふじたん先輩ダメダメー!」
先輩は、うぐっと何も言えなそうに口を閉じた。
なんだなんだ。
無理やり入部させられたりするわけじゃないんだ。
それが分かり、ホっと安堵の息を吐いた。
一安心。
やっと帰れる。
演劇部にも入らなくていいんだ。
良かった良かった。
あたしは静かに胸を撫で下ろした。
しかしほっと安心している間もなく、先輩は必死にあたしのことをアピールしだした。
「だってみんな聞いてくれよっ!!この子の声、最高なんてもんじゃないくらい最高なんだってばっ!!」
あたしは即座に隣にいる先輩を睨みつける。
ちょっとちょっと!!
余計な事言わないでよ?!
ハラハラした。
そんなこと言って、無理やり演劇部に入部するはめになったら最悪だ。
それだけはどうしても避けたい。