One STEP
スススっと、あたしの横に並ぶ弥生先輩。
「やっぱいいねっ香澄ちゃんの声、あたしも好きよ」
「そっ…そうですか…?」
自分の声のどこがいいのか分からない。
けど、きっと聞く人が聞けばよい声なんだろう。
そう思うことにした。
だって…嬉しいっ。
今までは〝顔が可愛い〟と言われたかった。
けど今は〝声が好き〟と言われて満足している自分がいる。
なぜだろう?
分からないけれど、先輩たちに認められた気がして、あたしは気づかれないように小さくガッツポーズを作ってみた。
これで度胸がついたのか?と言われれば首を縦に振ることはできないけれど。
なんだか違う、別の、凄く大事なことを学んだ気がした。