One STEP
「よし、じゃあ香澄ちゃん行ってみよー」
そう言っては優しくあたしの肩に手を乗せる慎也先輩。
小さく肩が跳ねたのは勘違いなんかじゃない。
小さくカタカタと震えていた拳。
気を抜けば座り込んでしまいそうなくらい、あの一言はあたしの中でとてつもなく大きな言葉だった。
慎也先輩はそんな状態のあたしに気づいたのだろうか?
誰にも気づかれないように、あたしの手を優しく握ってくれた。
繋がった手。
震える心が少しづつ、少しづつ和んでいく。
温かい温度がゆっくりとあたしの中に流れ込んでくる。
安心する温度。
心地よい温度。