One STEP
キィ、と擦れる金属音と共に、先輩の後姿が見えた。
速くなる鼓動。
生ぬるいけどどこか涼しい、そんな風がゆっくり吹き抜ける。
あたしは胸の前で手を強く握り締め、ゆっくりと先輩に向かって行った。
やはり綺麗だと思った。
風と共に揺れる長くて茶色の髪。
月光に照らされて、キラキラと輝いている。
弥生先輩が太陽の華なら、美空先輩は氷の華。
温と冷。
間逆だけど両方とも綺麗だと思う。
色あせることのない自分だけの色を持つ。
そんなオーラが漂っていた。
あたしの足は自然と止まっていた。
いつの間にか、先輩に見惚れていた。
どうしてこんなにも綺麗なんだろう。
遠くを遠くを見つめる先輩の瞳。
横からじゃ分からない。
一体、先輩の瞳はどんな輝きを秘めているの?
しっかりと向き合ったことのないあたしに、その答えは出なかった。