One STEP
先輩はあたしの存在に気づいたのか、ゆっくりとこっちを向いた。
「…………」
そして、何か言いたそうに顔を顰めた。
うっすらと。
月光しか頼れるものはないが、先輩の顔はハッキリと分かった。
うぅ…やはりまだ嫌われてるんだあたし…
あたしだってそれなりに凹む。
凹むし、イジケル。
でも今、あたしがここで逃げてはいけない。
だがら―――足を進めた。
前に、ただ前に。
進むしかない。
「先輩っ、あたしも寝れないんで、ここ座ってもいいですか…?」
あたしはゆっくりと先輩の顔を覗き込む。
ゴクリ、と生唾を飲み込んだ。