One STEP
あたしは何度も何度も紙を見る。
だが、その紙は何も変わらない。
【主役、荒木香澄】の文字。
間違っていない。
これはあたしの名前だ。
あたしの名前…どうしてこんな上に…?
「はいはーい、みんな集まったかい?」
慎也先輩が明るい声で入ってくる。
あたしは紙を見たまま、顔が上げられなかった。
震える指先。
信じがたい現実を目の前に、あたしは何も言うことができなかった。
あたしが…主役…?
考えただけで吐き気がする。
主役。
それは一番多くステージに上がる人。
嫌…嫌だ…あたしにそんな…そんな…っ。