One STEP
納得してあたしもそうなりたいと思った。
けれど多分あたしにはできない。
度胸がない。
勇気はない。
演劇部として、大切なものが何1つないんだ。
先輩は声のトーンを少し下げて、言い難そうにこう言った。
「あと寺原なんだけどさ、俺あいつと中学から一緒なんだ」
「…?」
突然変わった話題に、あたしは首を傾げる。
すると先輩は言いづらそうに呟いた。
「あいつさ、あんまり大きな声が出せないんだ」
鈍器で殴られたような感覚を覚えた。
ズン、と重い痛み。
頭を駆け巡るのは、さっき言ってしまった言葉の数々。
あたし…なんてことを…