One STEP
「もともと声が出なかったらしいんだけど、ちょっと中学でいろいろあって、余計に声が出なくなったんだ」
そっか…だからあの〝度胸づけ〟の時…弥生先輩だけやらなかったのか…
やっと繋がった。
繋がった瞬間、あたしの頬に涙が伝った。
「白雪姫のときはさ、あいつどうしてもやりたいって言って。あんなわがままな寺原は初めてで、みんな了解ってことになったんだ」
慎也先輩が口にしなくても分かる。
それは…それは、あたしのためでしょう…?
考えれば考えるほど、怒鳴ってしまった言葉の重さに気づく。
あたしのために先輩は必死になって演技をしてくれたの…?
〝先輩がやればいい〟
本当は先輩だってやりたいはずだ。
誰だって主役を狙っているはずなのに。
その重要な役をあたしに任せてくれたのに。
なのに…あたしは…
最低だ。
最低だ。
取り返しのつかないことをしてしまった。