One STEP
あたしは分からなかった。
何を言われるのか、少し恐くて肩を寄せた。
「だから人生初めての指きりげんまんとやらを、あなたは簡単に裏切る気なのって聞いてるの」
あたしはハっとした。
そうだ。
あたしは先輩と約束をしたんだ。
指きりげんまんをしたんだ。
ちゃんと文化祭で発表することができたら…あたしの事を香澄って呼んでくださいって。
どうでもいいことだけど、先輩には下の名前で呼んでほしいんだ。
だから、こんなくだらない約束をしたんだ。
くだらないけど、呼び捨てで呼んでほしくて…
「返事は?」
あたしはゆっくり先輩を見る。
先輩の顔は真剣だった。
そうだ。
みんな真剣なんだ。
1つ1つ、力を合わせて頑張っているんだ。
あたしはもう…その一員なんだ。