One STEP
「人前に立つのが…コワイんです…」
あたしは全身の力を振り絞り言葉にする。
弥生先輩に伝えなきゃいけないこと。
慎也先輩に本心を言ったように、弥生先輩にも伝える言葉がある。
「こんな取り柄もない、あたしなんかでいいのかなって…」
先輩が羨ましい。
綺麗で可愛くてモテる先輩が羨ましい。
けれどそれを妬んでいたわけではない。
純粋に羨ましかっただけ。
あんなこと…言うはずじゃなかった。
先輩の顔が見れなくて再び俯いてしまった。
「香澄…ちゃん…?」
ここで逃げちゃだめだ。
あたしまだ大切なことを言っていない。
あたしは拳を握り締めて、パっと顔を上げた。
しっかりと。
しっかりと弥生先輩を見つめた。