One STEP
自分の役割
「え――っ?!藤田先輩とラブ物語演じるのっ?!」
「しーっ!!!声がデカイってばっ!!!!」
躊躇することなく大声をあげる琴子に、あたしは必死になって琴子の口を両手で塞ぐ。
「うぐ」っと苦しそうな琴子なんて知ったこっちゃない。
あまりにも大きな声で声を発したもんだから、もちろんながら周りからの視線が痛い。
痛いなんてもんじゃないほど痛い。
うぅ…注目しないでほしい…
やはりあたしは今だ注目されることに慣れていない。
本当に慣れるのかなぁ…? なんてすごく心配になる。
でも頑張らなくちゃいけない。
絶対成功させるんだ。
「ん゛ー!!んふぶふうんー!!」
苦しそうにもがく琴子にやっと気づいたあたしは慌てて解放した。
「苦しいっ!!殺す気かっ!!」
「あは。ごめんよごめん」
へらりと笑いながら言ったもんだから、琴子はご機嫌斜めになってしまった。