One STEP
あたしは先輩の顔が直視できなかった。
俯いたまま言葉を濁す。
「だから…ごめんなさい」
あたしはゆっくりと頭を下げる。
先輩の顔が見れなかった。
どんな顔してあたしを見ているんだろう。
ぐるぐると回る。
不安。
「顔を上げて?」
頭上から、とても優しい声が降ってきた。
あたしは言われたとおり顔を上げる。
先輩は、笑っていた。
さっきと変わらない、にっこにこの笑顔で。
あれ…?
想像していたのとは全く異なった現実に、あたしは言葉をなくしてしまった。
先輩は全く気にしていない様子で――――むしろ断られることしか考えていなかったかのようだった。
先輩は胸ポケットから、小さな紙を取り出しそれをあたしの前に差し出す。
「3日後にね、新入部員を集めるために演劇をやるの。それを見てからまた返事くれないかな?」
その紙にはとても綺麗な字で、
日にち:4月18日
時間:15時~
場所:体育館
そう書かれていた。