One STEP
トントンと階段を駆け上がり真っ最中のあたしに声がかかった。
「香澄ちゃんじゃーん」
「っ!」
驚いて顔を上げればそこには相変わらずにこにこ笑顔な慎也先輩が立っていた。
目の前に突如現れた先輩。
あたしは驚きを隠せず、目を見開いて固まってしまった。
必死に昨日の事を頭の中からかき消す。
ブンブンブンブン頭を左右に振る。
あたしバカ!!
冷静になれバカ野郎ーっ!!
ざわざわと騒がしい心臓を何とかして落ち着けようと自分に言い聞かせる。
あたしが先輩のいる踊り場まで上ってくると、先輩は急ぐことなく歩き出した。
そのまま横を走り行くのもなにやら微妙だったから、あたしは先輩の隣で一緒になって歩くことにした。