One STEP
まったく急ぐ素振りを見せない先輩に疑問を持つ。
あれ?
時間ってまだだったっけ?
先輩のこの余裕そうな行動から、どうやらあたしは時間を間違っていたようだ。
先輩の横を一緒になって歩きながら、あたしは小さく声をかけた。
「先輩…」
「ん?」
小さく息を吸うと、小さく呟いた。
「…よろしくお願いします」
先輩は一瞬何のことだろうと首を傾げたが、あぁと手をポンと打ち付けた。
「こちらこそよろしくね」
そう言って差し出された手に胸の高鳴りが加速する。
心臓はバクバクパニックだったけれど、ここで変に慌てていたらオカシイと思ったから、あたしは何もない素振りで差し出された手を握った。
うぅ…先輩が好きと気づいてしまってからのあたし…オカシイ…