One STEP
「よしオッケー。じゃあ次、香澄ちゃんと藤田くんでいってみようか」
一通り2人の演技が終わったのを見届けた弥生先輩は、あたしと慎也先輩をの名前を呼んだ。
あたしは震えそうになる足ながらも、勇気を振り絞ってしっかり二足で立ち上がった。
大丈夫大丈夫。
あたしにもきっとできる。
何度も何度も落ち着かない心に、そして自分に言い聞かせる。
だいじょうぶ。
できる。
恐くて逃げ出してしまいたいと、心が悲鳴を上げている。
それでも人はやらなきゃいけない時がある。
それはきっと、今。
恐怖があるならそれを勇気に変えてみせる。
度胸がないならあたしはそれを作ってみせる。
慎也先輩と向き合う。
アイコンタクトでお互い気合を入れ合ってから、あたしはもう一度台本を見た。