One STEP
「ほら!泣いてないでおいで!」
「行きますよ~」
あたしに手を伸ばす先輩たち。
あたしは嬉しくて先輩たちの元へ駆け出した。
「泣かないの」そう言われるほど涙は出てくる。
人間って、悲しいときでも嬉しいときでも涙が出てくるんだね。
一番正直な器官だと思う。
あたしは先輩たちの手を握った。
向かうはみんなの待つ体育館。
温かい。
いつの間にか、あたしの周りはこんなにも温かくなっていたんだね。
ありがとうの気持ちがいっぱい。
溢れ出して、水溜りができちゃうよ。
「…ありがとうございます」
まるであたしはお父さんとお母さんに挟まれてる子供みたい。
両手が温かくて、心も温かくなる。
「みんなで頑張りましょ」
「俺はいつでも香澄ちゃんの隣にいるよ~」
自然と笑顔になる。
そんな人たちを、あたしはずっと昔から探していた気がする。
今、隣にいる人たちがゴールで待ってくれていた人たち?