One STEP
演劇って、みんなで協力して1つのモノを作り上げるんでしょう?
あたしはきっとみんなで協力して素敵なものを作り上げる、なんて無理。
その理由は小さい頃からそんなことしてこなかったから。
あたしはいつだって何だって、周りと協力することなく1人でこなしてきた。
周りなんて頼らない。
協力なんていらない。
あたしは1人で乗り越えることができる。
だからこういう考え方をしてきてしまったあたしだから、共同作業なんて無理だろう。
こんな自分、今更変えられるわけがない。
それはあたし自身が一番分かっている。
一番よく知っている。
足を引っ張られるのは嫌。
同時に他の人の足は引っ張りたくない。
ほら。
こう考えていくと、やっぱり無理だ。
「香澄?」
あたしの意識は、琴子によって引き戻された。
弾かれたように顔を上げると、琴子が不思議そうな顔であたしを見つめていた。