One STEP
あたしは満面の笑みを向ける。
先輩も笑ってくれる。
この瞬間が好き。
少しずつ完成へと近づいていく。
終わりへと近づくと、弥生先輩の指摘は一気に多くなった。
先輩は本気なんだ。
だからあたしはそれに必死に応えようと頑張る。
「うーん…ラストのユウヘイに呼びかけるところで泣けたりする?」
「え゛?!」
な…泣く?!
そんな女優みたいなことまで?!
あたしは言葉を濁す。
できます! なんて、出来もしないことを簡単に言えるわけがない。
でも感動の場面なんだから泣かないわけにはいかないだろう。
「んー、難しいよね。そこ泣いてるフリでいいから何とか頑張ってもらってもいい?」
「はいっ。頑張ってみます」
泣いてるフリ…泣いてるフリって…どんな?