One STEP
もう両手では数えられないくらい繰り返しただろう。
体力をつけておいて本当に良かったと思う。
結局上手くいかない。
感動しない。
どうしたら感動する?
やはりあたしが泣くしかないんだけど…
「難しいですね。こんなに難しいなんて思わなかったです…」
「確かに今回の主人公はいつもと違う感じなんだよ」
そう言って苦笑する先輩。
あたしはゆっくりと顔を上げて先輩を見る。
「…マジですか?」
「マジマジ。こんな難しい主人公、初めてだよ」
…弥生先輩酷い。
もっと簡単でもいいじゃないかぁ…なんて思った。
「寺原、かなり本気なんだと思うんだ」
そう言って、ステージで演技する弥生先輩を見る。
あたしもステージに視線を向ける。
咳を繰り返しながらも、必死に役をし続ける弥生先輩。
きっとかなりキツイんだろう。