One STEP
色づきだす世界
あたしは目の前の物を見て、驚いて目を見開いた。
「うわ…っ。かなり本格的なんですね…」
そこにあったのは演劇で使う背景。
ダンボールに描かれた教室や町の風景。
かなりリアルすぎで、開いた口が塞がらなかった。
「すごい…」
さっきからこの言葉を連呼しまくり。
これしか口から出てこない。
八木先輩は手を止め、ゆっくりと振り返る。
レンズ越しの瞳が嬉しそうに笑う。
そして胸を張って、自信満々に言う。
「毎回こうやって頑張ってるんだよ。みんなはステージで、俺らは影で頑張ってる」
「そうそう。みんな頑張ってるんだから、俺らだって頑張らないとだしね」
ペンキ片手に柳沢先輩も言う。
そっか…。
ステージに出ている人だけが頑張ってるんじゃなくて、こうして影で支えてくれる人たちも頑張っているんだ。
そっかそっか…。
みんなで1つになって、頑張っているんだ。