One STEP
先輩はあたしに笑いかけると奥へと行ってしまった。
一番最初に出るのはあたし。
主役の、あたし。
大丈夫。
大丈夫。
その言葉を何度も何度も自分に言い聞かせる。
ゆっくりと目を閉じる。
深呼吸をして心を落ち着かせる。
「それでは始めます!!」
夏沙先輩の声があたしの中で木霊する。
あたしはその声と共に、勢いよく目を見開いた。
「大丈夫。香澄ならできる」
不意にそう耳元で囁いた美空先輩。
シャァァァっと勢いよく開いた幕。
同時に背中を押された。
その反動で駆け出す。
――――――――――――行ける!!
今なら胸を張って言える。
見てて。
見ててよ先輩っ!!