One STEP
「幸せの間違いでしょ?」
「違うよ。妖精が逃げて行くんだって」
なぜかピンと指を立ててそう真面目に言う琴子。
そんな真顔で「妖精」言われても納得できない。
つーか妖精?
なぜ妖精?
そんなの逃げても関係ないでしょ…幸せが逃げるよりずっとマシだって、それ。
なんて思って、琴子はかなりの天然なのかもしれないと思った。
だから寺原先輩が好き?
接点か?なんて思って、それは違うか、なんて1人自分に突っ込んだ。
「と・に・か・く!香澄は有無を言わずに演劇部に入れーっ!」
「なぜそうなるっ?!」
そして命令形?!
初めて見たこんな興奮マックスで命令口調の琴子。
琴子はふんと鼻を鳴らし、あたしをビッシーっと指差しながらこう言った。
「もちろんあたしが寺原先輩と話すために決まってるでしょっ!」
友達を使うなこの天然女。
よっぽど先輩と繋がる何かが欲しいのか。
酷いとしか言いようがない。
絶対死んでも入らないけど。