One STEP
『悪いな…』
この言葉を聞いた瞬間、あたしの涙腺は崩壊した。
先輩の意地悪。
そんなの…台本をいくら読んでも書いてなかったよ…?
アドリブは嫌なのに…
『…リノア…』
そんな優しい声で呼ばないでよ…。
先輩酷い…それは反則…。
まるでその言葉はあたしに言ったように聞こえた。
あたしをなだめるような、落ち着かせるような。
先輩は…意地悪だ…。
『ユウヘ…イっ、好き…っ』
『あぁ…俺も好きだ…』
あたしは先輩に抱きついてしまった。
本当はこんなシーンないのに。
自然と体が動いていたんだ。
幕が―――――音をたてて閉まった。